練磨と芸遊、その両輪を体現する偕楽園の思想

法人研修の機会に訪れた水戸では、弘道館での学びに加え、日本三大名園の一つである偕楽園にも足を運びました。

偕楽園は、単なる庭園として整備された場所ではなく、学びと休養、緊張と解放、その両方を意図的に組み合わせた場として構想されたことが知られています。

弘道館で「練磨」し、偕楽園で「芸遊」する。

この二つを両輪として捉える発想は、人材育成や人格形成の在り方を考える上でも、示唆に富むものです。

自然の摂理としての「張」と「弛」

偕楽園の思想を象徴するものの一つが、「偕楽園記」に記された考え方です。そこでは、次のような自然観が示されています。

弓で言えば、張って緩める。
馬で言えば、走って止まる。
静と動、陰と陽の組み合わせこそが、自然の摂理である。

人は、緊張し続ければ疲弊し、緩み続ければ力を失います。だからこそ、意図的に「張る時間」と「緩める時間」を行き来することが、人としての成熟や健全な成長につながる。

こうした考え方は、古くからの東洋思想や儒教の教えとも重なります。

水戸偕楽園
水戸偕楽園

現代のリーダーシップと「バランス」の重要性

万物の霊長である人間は、陰陽のバランスを整えることで、より高い人格性を育むこともあれば、その逆もあり得る。この指摘は、現代におけるリーダーシップや人材育成にも、そのまま当てはまります。

成果を求めて走り続けるだけでなく、意識的に立ち止まり、感性を養い、心身を整える時間を持つこと。偕楽園の空間と芸術作品は、その大切さを静かに伝えてくれているように感じられました。

当協会が大切にしている「原則中心の生き方」や「人格主義」も、努力・成果・成長だけでなく、休養・内省・調和を含めた全体性を重視しています。

弘道館と偕楽園という二つの場が並立して存在してきた水戸の歴史は、人を育てるとは何かを、現代に問いかけているようにも思えます。

今回の訪問は、人材育成やリーダーシップを考える上で、改めて「バランス」の重要性を見つめ直す機会となりました。

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